侍物語

バットを握ると俺は侍になる…。

草野球の助っ人を頼まれたオカースキーです。百戦錬磨の鋼の肉体。疲れを知らない強靭な足腰。天才的なバットコントロール。野球に必要な能力をすべて持ち備えたその侍は8番レフトでスタメン出場した。

2回の表。その侍に最初の打席が回ってきた。

結果は3球三振。バットにボールがかすりもしなかった。その侍は表情一つ変えずベンチに引き下がった。

侍「打撃が駄目でも俺には芸術的な守備が有る。」

侍は心の中でそう自分に訴えかけた。

2回の裏の守備時。悪夢が起きた。相手の右の強打者が打った打球が三遊間の間を破り、俺が守るエリアに侵入してくるではありませんか。

侍「ぶっちゃけ。オッサンが打つ球なんてショボイっしょ?」

俺はボールを後逸し、ボールは転々とフェンス際まで転がり続けた。ボールは全く止まる気なし。俺が中継にボールを返す時には、ランナーはすでにホームインしてた。w俺様のタイムリーエラーで相手に先制点を許す形になった。

ギャーギャー騒ぎ立てる相手チーム。wあれにはちょっとカチンときたね。wさらにカチンと来たのはレーザービームでランナー刺してやろうと思ってボール追いかけてたら、ショートがすぐ手前まで中継に来てるの。wあれには拍子抜けしましたよ。俺様の肩を舐めているのかと?

正直、草野球なんて簡単だと思ってた。オッサンが打った球なんて正直知れてると思ってたし、外野に飛んでくるゴロなんて結構勢い弱まってるし簡単に処理できると思ってたけど、めちゃめちゃ速かったんだ…。

侍「脚長いもんでして。wう。うわー。ものそー。ベンチに帰り辛い。w」

その回。俺のタイムリーエラーを足がかりに味方にボロボロとミスが出て7点も取られた。俺のタイムリーエラーが相手チームを調子つかせるとという素晴らしい結果をもたらした。

二打席目。エラーを帳消しにしようと本気で打席に入った。フルカウントまで行って最後の一球。渾身のスイングでナインの声援にホームランで応えようとしたけど、ボールは無常にもミットに吸い込まれ、空振り三振。俺は悔しさのあまりバットをベースに叩き付けた。

終わってみれば11-1の完敗。天才の苦悩の日々はまだまだ続きそうだ。